藍色ノ狂詩曲 (SPED0304)


★データ★

● 基本データ
発売日:2003年11月14日 パッケージ内容:

ゲームCD(1枚)、サントラCD、
マニュアル(1色12ページ)、
ユーザーはがき
ブランド:SPEED / Noctovision
[WEB] / [WEB]
音声:女性キャラフルボイス
アニメ:なし
HDD:576MB
原画:ぷれしゃすている

● 傾向と評価
シリアス  90



















10  コメディ

陵辱系70

30ラブラブ系

万人向け15

85人を選ぶ

バグ指数10

安全

ボリューム35

やや少ない

客観的評価35


個人的趣味35


● 筆者が購入した理由
  • 絵柄が好みだった
  • 音楽ネタが前面に出されていた
  • 主題歌に「G線上のアリア」を選択していた


★レビュー本文★

§1 はじめに
 えーと、9ヶ月ぶり…かな(汗)。ここ2年ほどこんな感じですみません。

 SPEEDは1998年5月の「月下美人」でデビューしたブランドで、
スペースプロジェクト(SP)のブランド群の1つです。
SPEEDというブランドに専任スタッフがいるかは知りませんが、外部の開発チームが開発したソフトを、
販売しているブランドですな(SP系は基本的にそうだと思いますが)。
おそらく、SPEEDブランドでもっとも有名な作品は、デビュー作の「月下美人」だと思いますが、
あれは、すたじお実験室の提供作品ですね。まぁ、これは余談ですが。
そして、この「藍色ノ狂詩曲」は、「春待蜻蛉」等を制作したNoctovisionの提供作品です。

 …あと、そのものずばりは言ってないけど、今回結構ネタバレしてると思いますので、ご注意を。
§2 概要
 主人公・灰谷は音楽学校の学生で、将来を嘱望されたピアニストの卵。
しかし彼は将来を決める発表会を前にして、パートナーのヒカリから、
その関係を解消され途方にくれていた。パートナーがいないということは、演奏会のキャンセルを意味し、
それは希望している留学の道が絶たれることだった。

 そんな折、転校生の藍子が突然パートナーに名乗りでる。
その様子を複雑な心境で見つめる幼馴染の聡美、
一度は袖にしたものの、灰谷に未練があり、藍子の登場で気を揉んでいるヒカリ、
数週間後の発表会の日、灰谷はどんな選択をしているのだろうか。

…というようなストーリーです(オフィシャルのものを適当に要約しました)。
§3 システム
 システムは普通のコマンド選択式のAVGです。途中レッスンのシーンがありますが、
選択肢によってスキル値が変化するだけなので、オーソドックスなゲームシステムであると言えます。
スキップは未読・既読選択、バックログあり(音声再生はなし)、クイックセーブ・ロードと、
まぁ、普通の機能は備えています。ただ、なんとなく、古めかしい感じがするのは、
縁取りされていないメッセージ領域とか、画面デザインの問題でしょうかね。
あぁ、あとバックログで前後するときに、電子音が鳴るのはちょっと雰囲気壊すかなと思った。
せっかく、こういうネタなんだから、ピアノの音でも使っておけばいいのにと思います…。

 で、オーソドックスなシステムなんですが、機能に比して動作が重いような気がします。
うちのマシンは必須以上推奨未満なんですが、クリックは2回に1回くらいしか反応しないし、
画面効果はコマ送りになるし、テキストの速度遅くしておくと、3文字ずつ表示されますし、
どうにももっさりとした印象があります。環境に依存していることかも知れないので、
あまり断定的なことは言えませんが、これが仕様ならば、無駄に重過ぎです。
このシステムならば、普通に組めばPentiumIIレベルでさくさく動くと思うんですが…。
一応、うちのマシンは必須環境も満たしていないYsVIが軽量モードで普通に動作しましたよ(と言っておく)。

 Noctovisionのページに、しっかりデバッグはやると書いてあり、確かに目立ったものは出てません。
ただ、なんというか、世間でバグといわれるエラーの類はないようですが、本当の意味でバグは…。
詳しくは、シナリオの項で記述します。
§4 シナリオ
 一言で言ってしまうと、とっても微妙ですね(汗)。
なんというか、3つくらいの企画がごっちゃになっているような印象があります…。
それくらい、キャラによって、シナリオの系統が違います。
あるキャラはごく普通の恋愛物っぽい感じになりますし、あるキャラに行くと、
これは大沢在昌の世界ですかというような、ごっつい話になったりとかしますし。
それも、エンディング直前にそういうネタばらしされるので、全体としてバラバラな印象に…。
ただ、どのシナリオに行っても、主人公の毎朝のモノローグはほとんど変わりませんし、
ごく普通にレッスンしてたりするので、はてどんなシナリオやってるんだっけと悩む事がたまに…。

 ただ、全体通して思うのは、「これ、一体どんな選択を想定してるんだろう」ということ。
多分、想定ルートがあって、それに沿って文章なんか作るだろうと思うんですが、
文章にまったく矛盾がなくなるのは、かなりすごい選択をしたときなんですよね…。
いや、そのルートは小説として読む分にはきれいかも知れないけど、ゲームとしてはどうだろう…。
そんなことをひしひしと思うことしきりでした。そういう意味で、矛盾のない文章を読むには、
それなりに難易度が高いです(苦笑)。まぁ、一度文章見てしまえば、そのルート通るのは難しくないですが。

 あと、音楽が主題という割に、その設定があまり生かされてないですね。
なんというか、あくまでアクセントみたいに使っていて、音楽がシナリオの主眼点ではないんですね。
例えばこう、これから一緒に音楽やっていこうなんて、エンディングがあったりすると、
個人的にはよかったんですけどね。そういうのないですし。
ところで、この作品を作るにあたって、楽器や音楽に詳しい人の監修は受けなかったんでしょうか。
わたしはそういう楽器をアマチュアながらやってた人間ですが、明らかに誤解があったり、
間違いがあったりする部分が、結構あるんですよ…。音楽ネタ期待した人間としては、ちょっと残念かな。
そうそう、シナリオによって、真相が変わってしまうのも、個人的にはNG。
いや、もしかすると、真相は同じで言ってることが違うだけなのかも知れないんですが(謎)。
あとは、主人公が見てるものは、すべてが真実なのかどうか判断つかないっつーのもなぁ…。

 システムの項でいったバグ云々という話は前述のほとんどのルートで文章に矛盾点が発生することと、
あとは、存外誤字の類が多いんですよ。システム的なバグはちゃんと潰したのかもしれないですが、
ゲームである以上、シナリオの矛盾点とか、誤字なんかはバグの範疇だと思うんですが、どうでしょう?
結構、謎が謎として残ってしまっていますし、納得行かない点も結構ありますし、もったいないですね。

 いずれにしても練り込み不足の感がぬぐえません。もうちょっと練りこんで、文章を精査してもらえば、
だいぶ良い作品になったんじゃないかと思うんですけどね…。

 以下、2003年12月22日追記。このシナリオ、音楽ネタなのに、何か変だとずっと思っていたんですが、
某ゲームのレビュー書いていて、その理由がやっとわかったので、追記します。
このシナリオ、音楽である必然がないんですよ。要するに、主題に音楽絡みのファクターがないんです。
あくまでこのゲームの主題は「パートナー解消による危機」「新たなパートナー」「嫉妬する幼なじみ」なのね。
つまり、テニスの混合ダブルスでも、フィギュアスケートペアでも、画学生とモデルでも、
男女ペアで、かつ成果が評価対象になるものなら、なんでも差替え可能なんだな…。
そういう点が、音楽物として捉えたときに感じる違和感だし、(音楽に関する)リアリティのなさなんだと思う。
このご時世、シナリオに必然を求めるのは酷なのかも知れないけど、音楽物という売り方をして、
音楽を表面的にしか扱っていないというのは、やはり弱点なのではないかなぁ…。
まぁ、えろげーなので、単にHシーンの舞台として、音楽学校を使いたかったっていうんならわかるんだけど、
少なくとも、売り方とか見てると、そこにこだわってるとは思えないんだよね…。追記、以上。
§5 Hシーン
 Hシーンがあるキャラは、藍子、聡美、百合子、久子、ヒカリ、夕菜の6人。
それぞれ、それなりに回数はあるんですが、一回ごとのシーンはさほど長くないので、
全体のイメージとしては、さほど濃くはないですね。あとは、傾向と評価に書いたように、
別の人間に襲われたりだとか、突如わけもわからず奉仕されたりと、純愛系のHシーンは少ないです。
コンプリートしようとすると、某キャラが襲われるシーンを繰り返し見ることになるので、
そういう系統が好きじゃない人は、手を出さない方が無難かと思われます。
Hシーンやシナリオの傾向から判断すると、メインヒロインは聡美です。間違いありません、絶対です。
§6 原画・CG
 原画はぷれしゃすている氏。ちょっとぷにぷにしたような、かわいい系の絵を描く人ですな。
本人のウェブによると、お絵描き職人兼三流アニメーターだそうですが(汗)。
個人的にはすごく好きな絵柄なんですけどね。多分、違う絵だったら、買ってません(笑)。
かわいい系の絵ながら、体のデッサンもすごくうまいですし、それほど崩れないのもいい。
まぁ、立ち絵で向きが変わるとちょっと違う風に見えることもありますが、それはご愛敬。
余談ですが、夕菜の私服についているなるとマークは、氏のページを見ると謎が解けます(笑)。

 立ち絵に関しては、かなりパターンも多く、立ち絵が大きくなったり小さくなったり、
また、背景がスクロールして、立ち絵が動いたり、表情パターンも多いですし、かなり力が入ってます。
それほどイベントCGは多くないんですが、この豊かな立ち絵によって、だいぶカバーされてますね。

 背景は、たまにすごいのがあります(汗)。見た瞬間、わたしはうわっと叫んでしましました(苦笑)。
最近、背景もかなり力入ってるところが増えたので、このレベルだとちょっと気になりますね。
問題ないレベルのものも多いんですが、海岸とか自室の背景はちょっと雑すぎかなぁ…。
§7 音楽・ボイス
 音声に関しては、イメージからさほど外れてる人もいませんし、そこそこうまいです。
特に問題があるレベルではないです。が、しかし、ときどき、妙に残響がある音声がありますね。
一体、どこで録音したんでしょうかというようなのが(苦笑)。それはちょっと残念ですね。

 音楽に関しては、基本的にクラシック系の音が鳴っています。ピアノは生音らしいですな。
主題歌になっているのが、G線上のアリアをアレンジした奴なんですが、
うーん、これは選択ミスなんじゃないでしょうかね…。だって、主人公ピアニストでしょ?
生音で入れてるのもピアノですよね?G線上のアリアって、ピアノは伴奏ですよ、完全に。
このゲームの内容から考えると、ショパンのエチュード「革命」とか、
パガニーニのカプリスNo.1(これもバイオリン曲だけど、ピアノにアレンジしてもおかしくない)とかの方が、
良かったんじゃないかなぁと思うんですけど…。ぶっちゃけた話、ピアノって、比較的サンプラーでも、
そこそこの音が鳴るんですが、弦楽器は違和感ない音出すのは面倒なんですよね。特にソロは。
今回の音も、弓の上げ下げの音色の差を気にしていないようですし、かなり違和感あります(個人的には)。
アレンジ自体はそれほど悪くないと思うんですけどね。
全体的な音楽の出来は、まぁそこそこといったところでしょうか。
上で言っている弦楽器とかの違和感を除けばですが…。まぁ、この違和感もわたしみたいに、
クラシック系の耳を持っている人間だけが気になるもんだと思うので、
普段聞かない人は問題ないかも知れません。実際、世間的な評判は悪くないみたいですしね…(苦笑)。
§8 総評
 というわけで、総評です。
全般的に、色々損してるソフトだなぁというのが、一番の感想でしょうか。
色々いい素材は持ってると思うんですよ、原画にしても、音楽にしても、企画的にも。
でも、それの料理を間違っている気がします。おいしいところを切り落としてしまってるというか…。
例えば、立ち絵にはものすごいこだわってるんですよ。もともと種類が多いし、
朝・昼・夜で立ち絵の光の加減までいじってるんですから、たいしたもんです。
でも、そのこだわりがすべてに発揮されているわけじゃないんですね。
もちろん、取捨選択があるのは当然なんですが、立ち絵にここまでこだわるんだから…と思ってしまいます。
いや、そりゃあ、見るべきところがないんじゃあ、しょうがないんですけどね(汗)。
色々練り直して再構成して、リベンジして欲しい気分です、はい。

P.S. キャラ的には藍子が一番好きなんですが、シナリオがな…。

良かった点 悪かった点
立ち絵の表情が豊か
原画の出来は良い
シナリオの練り込み不足
「音楽」というものへのこだわりがイマイチ



(2003年11月30日) (2003年12月22日追記)

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